校長室の窓から

第79回中学校卒業式
2026/03/19

3月18日に中学の卒業式を挙行いたしました。卒業生による門出のことばは真っ直ぐで、会場の皆様の涙を誘いました。保護者代表の方の挨拶も素敵で、生徒へのメッセージが届いたに違いありません。以下に式辞を載せます。

式辞
 
早春の冷たい風に耐えモクレンがつぼみを膨らませ、真っ白な花を咲かせようとしています。校庭の桜の枝先にも変化が見えてきました。今まさに春の足音が聞こえ、出会いと別れの季節がやってきたことを実感しています。みなさんが次のステージへのスタートラインに立ったということです。
3年生のみなさん、卒業おめでとう。保護者のみなさま、15年前の東日本大震災/不安な思いを抱えての子育て。そのお子様が、中学校の卒業と9年間の義務教育を終了することになりました。心よりお喜び申し上げます。そして、私学への追い風などと言われるものの、中学受験をする児童が小学生全体の2割程度しかいない状況で、受験を決意し、本校にご入学いただいたことに改めて感謝申し上げます。
また本日はご来賓のご臨席を賜りまして誠にありがとうございます。生徒たちの門出をご一緒にお祝いできること嬉しく思っております。
 さて、地元の公立小学校ではなく私立中学に通うということは、電車通学も承知の上で学校選択をするということになります。小学生の子を持つ親として、コロナ最中のことや、災害時のことを考えると大変なご決心であったろうと推察いたします。2023年に東京立正中学校にご入学されましたが、中学校時代というものは、思春期であり、心と体の成長が著しい時です。それはつまり心も体も不安定でザワザワすることが自然であるということです。このような時期だからこそ、五感を使っての体験を通した学びが必要なのです。そうして自分だけが照らすことのできる、「誰か・何か・どこか」を見つけてほしいという「全員レギュラー」を叶えて欲しかったのですが、どうだったでしょうか。
月曜日の午後に中学全体で行ったクロスカリキュラム。校内の畑を耕して野菜を育てるわけですが、生徒数も増えましたから、大幅に畑を広くしました。「食」ということを考える上で土の存在とその状態は重要です。そして土に触れることそのものも大切です。全学年をミックスしてのこの学びは、栄養素いっぱいの土の中で生徒という苗を育てるような感じでもあります。スーパーやコンビニでは同じ形の野菜ばかりを目にするでしょうが、実際は大きさも形もまちまちで、みなさんもそうですよね。このように一から育てていき、その命を食するということは大変貴重な体験でした。野菜といえば、先日、朝日宇宙フォーラムに参加し、宇宙飛行士の話を聞いてきたのですが、長期滞在できるように、いまや宇宙で野菜を育てており、食料自給できるようになると言っていました。
さて、宿泊行事はビッグイベントでしたね。行く前のバス割りや部屋割りなども重要で、ここにも大きな学びがあったはずです。1年生での身延山参拝研修は私も引率しましたが、287段の階段を駆け上っていく皆さんの姿に元気をもらいました。精進湖から見た富士山の美しさは今でも思い出せますし、男子風呂の騒ぎも懐かしく思います。農場で乗ったトラクターで絶叫していた皆さんも可愛らしかったですよ。2年生の京都奈良は、暑くて大変でしたが班で行動するタクシー研修が大好評でしたね。3年生の英語合宿は「NO JAPANESE」で日本語禁止の罰トレーニングが付いてくるものですが、楽しかったという話を聞いています。ランゲージヴィレッジの校長先生が別れ際に涙された程、みなさんの人懐っこさが評判でした。クラスメイトと寝食を共にし、新たな人や事や場所との出会いがある、これが宿泊行事の醍醐味です。
このほかにも中学独自の校外学習としてダイアログインザダークやキッザニア・横須賀軍港めぐりなどと沢山の経験をしています。ダイアログインザダークは視覚障碍者と同じ状況にするために100%暗闇の中で活動をします。そこでのコミュニケーションが勉強になるだけでなく、障害がある方への接し方も学びましたね。キッザニアでは本来の体験だけでなくちびっ子たちの面倒も見ていたと聞きました。皆さんらしいですね。今年の横須賀クルージングツアーでは日米の戦艦や潜水艦が見られましたが、安全保障の観点から想像力を働かせてほしいと願っています。
 昨年度までの探究活動は杉並区へのアプローチとして、区役所の環境課の方々にお越しいただき、フードロスや循環型社会という課題に対してプレゼンをしていました。今年は、教室を飛び出し、学んだことを外部の方々に体験的に理解していただくという取り組みにもなりました。「杉並フェスタ」への出店がそうです。クイズ形式のスタンプラリー・地球を主人公にした紙芝居・温暖化の影響を受ける動物の塗り絵などです。自分が分かるだけでなく、誰かに分かってもらうということは難しいかったはずです。いい経験をしていますね。杉並区とのテーマ学習ということだけでなく、普段の生活の中から「当たり前」と言われることに「なぜ」と問い、思考停止しない人であってほしい。そして、普段の生活の中の「おはよう」「いってきます」「また明日ね」「ただいま」といった「当たり前」が、どれほど幸せなことかを感じることができる人でもあってほしいと願っています
さて、みなさんは中学を卒業し4月には高校生になります。部活動や勉強や探究活動などに若いエネルギーを注ぎ込むのでしょうが、どうか自分のことだけに興味関心がある人にならないでください。ご家族や身の回りの人たち。はたまた日本のことや世界の事に思いをはせることができる人になって欲しいのです。先ほども触れましたが、2011年3月11日の東日本大震災。福島原発事故の影響で帰還困難区域に指定され、いまだ故郷に帰れない方々が沢山います。2024年1月1日の能登半島沖地震は、地震そのものの被害だけでなく、復興の遅さが人々の生活に影響を与えていますし、そうこうしているうちに豪雨による被害も出てしまいました。国による支援も満足な状況ではなく見捨てられたと言う方々がいます。ウクライナとロシアの停戦を望んでいるうちに、ガザではイスラエルとハマスの紛争が始まりました。そしてイランに対してイスラエルとアメリカが攻撃を始め、イランによる報復攻撃となっています。ホルムズ海峡は事実上封鎖となり原油タンカーは動けません。物価高で苦しんでいる所へ更なる打撃になってしまうかも知れません。どうかみなさん、個人の幸せだけでなく、社会の幸せとは何なのかを気にかけてください。宮沢賢治がこういう言葉を残しています「世界が全体に幸福にならないうちは、個人の幸福はあり得ない」と。また、幸せとは自分のせいではなくても、一瞬のうちに奪われてしまうこともあります。それは戦争であったり、自然災害・事故・事件などです。幸せとはひょっとしたら毎日の奇跡の連続なのかも知れません。
そして、私たちの毎日は選択の連続でもあります。何を選ぶか?それは朝起きたことろから始まっています。また、人生の岐路においては重大な選択を迫られることもあります。中学3年生という時期もそうでしたが、さて、これからどうしましょうか?怖くて選択できない・自分で選択せずに人任せにする・選択したのちにあれこれ後悔する。どれも後ろ向きですよね。勿論最適な選択をすることを目指しますが、心をどのように設定したらよいのでしょうか。「誰かの正解が自分の正解とは限らないのだから」「正解探しをするのではなく、自分で選んだ道を正解に育てる」と考えることをお薦めします。そのためには、臆病にならず、できない理由探しなどもやめることです。何を思い、何を語るかによってあなたの道を正解とし、社会の未来を変えるのです。
 
マザーテレサは「思うという行為」や「言葉」についてこう言っています。
 
思考に気を付けなさい それはいつか言葉になるから
言葉に気を付けなさい それはいつか行動になるから
行動に気を付けなさい それはいつか習慣になるから
習慣に気を付けなさい それはいつか性格になるから
性格に気を付けなさい それはいつか運命になるから 
 
結びになりますが、先の見えないこの社会で、みなさんのことを第一に考え暖かく見守り、日々送り出してくれたおかあさん、おとうさん、ご家族に「ありがとう」の言葉を伝えてほしい。そして、東京立正で体験し、培った生きる力がこれからのみなさんの支えとなることを心より祈念しています。
 
令和8年3月18日
東京立正中学校
校長 梅沢 辰也
 

 

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