校長室の窓から

高等学校卒業式 2022.3.1
2022/03/01

本日の春日和の中、高校卒業式が挙行されました。

式辞
 
紅梅は正門を彩り、白梅が1つ2つとつぼみを綻ばせています。日出は早くなり、夕焼けは部活終わりのグラウンドを照らすようになりました。吹く風も柔らかくなり、変化は春の訪れを知らせています。そしてそれは、出会いと別れの季節を迎えたということです。
3年生のみなさん、卒業おめでとう。保護者の皆様、そして本日参列できなかった皆様、お子様のご卒業を心より祝福いたしますと共に、3年間のご理解とご協力に厚く御礼申し上げます。来賓の方々も皆様と一緒に、門出を祝いたいとのことではありましたが、このご時世ですのでご遠慮いただいております。
さて、改めて、卒業生のみなさん。おめでとう。3年間いかがでしたか?
この3年間は、みなさんが思い描いていた高校生活とは大分違ったものになったのではないでしょうか。新型コロナウイルスの影響が高校1年の終盤から始まりました。1月のスキー教室がギリギリの実施で、その後は全国一斉休校に向かっていきましたね。誰もが初めて経験することで、目の前の事すら想像がつきませんでした。しかし、4月から通常通りに高校2年をスタートさせることが困難だ、ということだけは分かっていました。課題やon-lineで学習のサポートをしつつ、6月からの学校再開を迎えることとなりましたね。分散登校を実施し、2週間で1週間分が進んでいくことに。失った授業時数を確保するために、1学期を伸ばし2学期は早く始めました。
体育祭や紫苑祭は縮小しながらもなんとか実施。この頃には「生命の尊重・慈悲・平和」を謳う東京立正の方針は見えており、明らかに他校と違う方向を目指していました。それは、東京都や文部科学省の方針に反する訳ではないけれど、本校の独自性として、「通常登校」と「放課後の部活動」をなんとか守ることでした。当時は生徒のみなさんからも「よそとは違うぞ」「大丈夫か東京立正」との声が聞こえてきたのも事実です。しかし、家に閉じ込めて、液晶画面の前に何時間も座らせて、「これで私たちは生徒の健康を守っています」、「ICT教育が進んでいる学校でしょ」というのは違うと捉えていました。家にいることで夜型人間になってはいけない。いつもとおり朝起きて太陽に当たって通学し、学校で友だちと会い授業を受け、放課後は好きな部活動をする。夕方は早めに帰宅して疲れを翌日に残さない。これこそが、若いみなさんが本来持っている免疫力・自然治癒力を落とさない方法だと信じていたのです。結果、通常登校を続けているのに陽性者・感染者数が少ない東京立正と言われています。とは言っても、大会が中止になったり、沖縄修学旅行は延期したもののon-lineになったり、予防予防と息苦しい生活が当たり前となるまで強いてきたことはいうまでもありません。
 
残念だったものもあるけれど得たものもあります。
みなさんはたくさん工夫したし、できない理由探しではなく、できる理由探しをしましたね。最後の体育祭は前年よりも種目を増やし、艶やかな浴衣姿の花笠音頭とエッサッサの雄姿を見ることができました。あの時期にあれだけにぎやかにやっていて、近隣から苦情が来ないのも素晴らしい。紫苑祭の映像つくりは2年目の安定感があったし、体育館の傘のレイアウトはカラフルで綺麗でした。なんと言ってもアイデアが良かった。
みなさんは3年生ですから大学受験の準備も本格化してきましたね。夏休み中は、総合型選抜試験の準備に先生方が毎日のようにしっかりサポートされていて、これも他校と違う、東京立正らしい温かい文化でした。コロナはというと、秋から冬にかけて落ち着いたかと思いきや、オミクロン株の出現で、入試とコロナという悩みが再発してしまいましたが、みなさんが、たくましく前向きに受験に臨んでいる話を嬉しく聞いていました。
また、みなさんも聞いたことがあると思いますが、学力を世界レベルで見た際に、日本人は、論理的思考力・批判的思考力・読解力・課題発見解決力・表現力が弱く、海外の若者に後れを取っているとされてきました。日本の学びを変えなくてはならない。だからこその大学入試改革であったはずです。だとしたら、みなさんは今のこの事態をどうとらえなくてはいけなかったのでしょうか。
毎週月曜日の1時間目を通して何回も何回も言ってきましたね。「思考停止」してはいけないと。みんなが言うから。みんながするから。テレビで言っているから。ではなくて、複数の情報を得て、自分の頭で考え自分の責任のもと自分で判断すること。本当にそうなのかと「課題」を設定し「なぜだろう」と考えること。公表されている正式な文章を読み解くこと。科学的視点で数値に目を向けること。「コロナ」しかり「ワクチン」しかり「ウクライナで起きている戦争」しかりです。これからの人生、同様なことは必ず起こります。そんな場面に出くわした場合には、雰囲気とか同調圧力とかではなく東京立正で目指してきた「思考停止しないこと」を思いだしてください。自分を守るため愛する人を守るため、これからも勉強を続け、身に付けた力を意味があるように使ってほしい。
さて、冬季オリンピックで4回転アクセルに挑戦したフィギュアスケートの羽生選手は「挑戦はアスリートだけがしているわけではなく、普段の生活でみんながなんらかの挑戦をしています。私だけが特別ではないのです」と言っていました。まさにその通りです。そして女子カーリングのロコ・ソラーレの選手たちは、日本代表を決める決定戦で連敗し、あとがなくなった時にみんなで「運命をかえよう」と決めたと言っています。そして考え方と発する言葉を変えたのです。その結果2連敗後の3連勝という大逆転で日本代表の座を勝ち取り、冬季オリンピックの予選リーグの戦いとなり、同率でまさかの準決勝進出で涙し、前日に敗れたスイスを準決勝で下し、イギリスと金メダルを争うところまで進んだのです。しかし、運命とてアスリートだけに起きていることではありません。私たちの日々の生活の中にあり、私たちの人生に起きていることなのです。
マザーテレサはこう言っています。
思考に気をつけなさい それはいつか言葉になるから。
言葉に気をつけなさい それはいつか行動になるから。
行動に気をつけなさい それはいつか習慣になるから。
習慣に気をつけなさい それはいつか性格になるから。
性格に気をつけなさい それはいつか運命になるから。
 
日本という国は「同じ」であることを求められることが多いです。しかし、挑戦も失敗も運命も、人は自分と違っていていい。自分は人と違っていていいのですよ。
さあ卒業生のみなさん、新たな世界がみなさんを待っています。スタートラインにつく準備はいいですか。スタートの仕方もそれぞれでいいじゃないですか。気合入り過ぎてフライングする人がいるかも知れません。スタートダッシュもいいでしょう。ゆっくりと確実な1歩目を踏み出すのもいいでしょう。しばらく様子を見てから「さあそろそろかな」もいいでしょう。
とにかく前に進むことです。未来はみなさん次第です。
 
結びになりますが、門出のお祝いに、私の好きな言葉を贈らせていただきます。
 
 たとえ空に限りがあるとしても 自己に限りを設けるな 
かくなりたいと願え さらば成就せん
 
令和4年3月1日
東京立正高等学校
校長 梅沢辰也
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