校長室の窓から

入学式 式辞
2023/04/10
2023年度入学式 式辞
 新入生のみなさん入学おめでとう。春の息吹を感じる初々しい薄緑色の若葉のようなみなさんを本校に迎え入れる日を、私たち教職員及び在校生一同心待ちにしていました。そして保護者のみなさま、お子様のご入学おめでとうございます。保護者の皆様も参列しての式を挙行できて大変うれしく思っております。コロナ禍での受験という不安な経験をご家族で乗り越えたことを心よりお喜び申し上げますと共に、数ある私学の中から本校と出会い、ご入学されたご縁に深く感謝いたします。
 東京立正は、日蓮聖人第650遠忌の記念事業として、創立者岡田日帰上人が、「五重塔を建てるよりも人の心にこそ塔を建てよ」という志のもと、昭和元年に設立いたしました。そして、教育理念を「生命の尊重・慈悲・平和」とし創立97周年となりました。女子校としてスタートしその後共学となり、もうじき百周年を迎えようという伝統ある本校ですが、皆さんのこれからと東京立正のこれからは今日からが始まりです。ここで未来をつくるのです。
 世界の若者と比較して、日本の若者は自己肯定感が低く、更に学力が低下したと危惧されています。その理由は一つではありませんが、何をもって評価するかという価値観の多様性が損なわれているのではないかとも考えられます。また学力とは単に記憶力を主とした力のことではなく、文書やデータ・事象を読み取り、課題発見解決するために必要な思考力・判断力・表現する力などのことを言っています。そして、主体的で深い学びを実現するためのアクティブラーニングも求められ、「大学入試改革」を通して中高の学びに変革を起こそうとしているわけです。
しかしながらみなさんの日常は、当たり前といわれるものに囲まれており、一方的な情報を大量に継続的に浴びせられています。このような状況で生活していると、物事を読み取るとか、課題発見どころではなく、考えることをしなくなってしまいます。私たちはそれを「思考停止」といいます。
コロナについてもそうです。感染拡大時の対応や収束しようとしている現状でも考えなくてはいけません。ウクライナ侵攻についてもそうです。少子化などは切迫した国家的大問題です。私たちはもっと「なぜだろう?」と問いかけることをしなくてはなりません。与えられる情報だけで「へ~そんなんだあ」ではなく、自ら求めて情報を獲得していく必要があります。そうして取捨選択するという自由を発揮し、自分の考えを構築することを習慣とするのです。そうでなくては、読み取る力も課題を発見する力も養うことはできないのです。そのためにも日々の授業が大切になっているのです。
 学校とは学ぶ場所です。それは知識であったり、経験であったり。嬉しいことであったり、残念なことであったりもします。それらを全部含めて学校です。みなさんのやりたいことができる場所。みなさんのやらなくてはならないことがある場所。そして東京立正の先生方はみなさんのやる気スイッチを押してくれるはずです。爆発的な変化が起こるのも若さの特権です。挑戦があれば失敗もあります。それもまた学びとし、そこから人と同じでなくていい、何処かを誰かを照らすことが出来る「自分」を作っていくのです。
 学びとは授業だけのことではなく、行事や部活動も含みます。クラスの一員として、あるいは部活動の一員として、その目標を達成すべく努力することは尊いことであり、大きな成果を得ることになります。そして、場所についても教室だけではありません。限られた環境の中で、狭い価値観で自分を評価してしまうのではなく、活動範囲を広げてみてはどうでしょう。SDGsプログラムで他学年との交流や地域の方々との交流があります。校内の畑を耕したり、高円寺阿波踊りのサポーター・寺子屋・こども食堂などです。すこし手を伸ばした所では、福島県の産業支援や環境維持活動などもあり、様々な人と出会い、チャレンジすることができます。いっそのこと日本を飛び出して一気に海外への行くのもいいでしょう。今年度から全学年対象のオーストラリアサマープログラムが再開となります。昨年度導入したニュージーランドへのターム留学制度では、高校1・2年次の3学期の三か月間の留学ができるようになりました。また、海外大学進学協定校推薦制度では、海外70の大学と提携しており、現在ボストンに留学中の先輩がいます。中学生は「NoJapanese」の国内語学合宿とし、高校はイノベーションコースでカンボジア研修のプログラムもあります。思い切って違う目線で世界を日本をそして自分を見つめ直し、複眼的に思考する力を身につけてほしいと願っています。
また、本年度から新たに企画した、「北海道の学校と沖縄の学校に呼びかけ、本校と一緒に日本の未来を思考する学校間交流」を始めることになりました。ロシア・中国・アメリカといった大国を視野に入れ、日本の安全保障を主として未来を考える「場」を作ったということです。不安定な世界情勢の中で、同世代の若者が集い、自分たちに何ができるのか、何をしたいのかを考えるのです。チャンスがあればみなさん積極的に関わってほしいと願っています。
結びになりますが、
「愛の反対は憎しみではなく無関心だ」と言います。クラスメイトのこと・友達の事・ご家族の事・災害地域で被災された方々の事・世界の事に無関心な傍観者になってしまうのではなく、関心を持ち、自分事と考え、愛にあふれる世界をつくっていくのです。そのために、すぐにできてしかも大切なことは「挨拶」です。新入生の皆さんと共に、今まで以上に挨拶がこだまする、ハートフルな学校「東京立正」にしていきましょう。そして、出会いと感動にあふれた学校生活になることを心から願っています。
令和5年4月7日 
東京立正中学高等学校 校長 梅沢辰也
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